乾 眞寛 masahiro inui football world

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今月の一蹴言

第8回 『本物を見抜く眼』 ~スペイン研修雑感~
2014.02.24

本物と偽物の違いを“何を”“どうやって”“どこで”見分けるのか?

 

TV番組の「○○鑑定団」に登場する経験豊かな鑑定人は、素人の眼では気付かない“ちょっとした違い”をいとも簡単に見つけ出し、的確にその市場価値(金額)や希少性を見抜いてしまう。

 

ワインのソムリエは、自身の五感を駆使して、瞬時に味を識別できる特殊能力を有している。サッカー指導者の必要条件とは何なのか?

 

サッカーコーチとしての資質や才能には色々な要素があるが、“伸びる選手”つまり才能を見抜く眼の確かさは、コーチにとって不可欠であり、最も重要な力であると言える。だからコーチは「眼力」を鍛えなければならない。

 

将来の不確定な未来を予見し、伸びる芽を見い出し、その年齢に応じた指導プログラムをどう与えていくのか?その選手のレベルに応じた練習環境をどのように設定していくのかによって、才能は開花することもあれば、途中で伸びるべき芽が摘み取られてしまうこともある。

 

1月中旬に、恒例のスペイン研修を行った。福岡大学から4名の現役学生がスペイン2部A所属のエルクレスCFで2週間練習参加した。また、その間に開催されたリーガエスパニョーラⅠ部公式戦、A・マドリッド対バルセロナというリーグ首位争いのダービーマッチをスタジアムで観戦させた。

 

『“本物”と“偽物”の違いを知る、もしくは、見分けるには現地で“本物”に触れて“本物”をたくさん見ることによってのみ、「本物を見抜く眼」と“感性”が養われる。』と日頃から常々、学生たちには伝えている。まさに、本物の闘いの空気に触れ、刺激を得たはずだ。

 

この研修制度も6年目を迎えるが、学生たちの体験研修だけでなく、指導者としての私自身の眼を“世界基準”に置くための機会でもあると位置付け、スペイン国内のいろんなクラブを訪問し、様々なコーチと触れ合い、意見交換しながら、クラブ独自の育成の視点や方法論を学び続けている。

 

「学ぶことをやめた時、教えることをやめなければならない。」という、ロジェ・ルメール氏(元フランス代表監督)の言葉通り、一年に一度は本物中の本物に出会い、学び続けたいと思っている。

 

今回は、福岡大学サッカー部の卒業生で教員として、あるいはクラブチームのコーチとして現場の指導者になり活躍している同級生OB3人が私に同行してきた。

 

ヨーロッパも初めて、スペインも初めての面々だったが、わずか一週間の滞在で、国王杯1試合、リーガ2試合の計3試合を観戦した上に、FC・バルセロナの最新トレーニングセンターでは、U-12クラスの日本人、久保君の練習見学から、U-13、14クラスの練習、バルサBの練習視察。更に、バルセロナの育成プログラムの総括責任者であるジョアン・ビラ氏と面談した。オフィス内で2時間半もの長時間、パワーポイントや映像を用いたFCバルサの育成指導や具体的メニューについての講義を彼から直接聞く機会を得た。

 

その他にも、週末に開催されるU-6、8の地区リーグ戦や、U-13、14のリーグ戦などトップレベルから町クラブの草の根(グラスルーツ)レベルまでを効率よく視察、研修することができた。もちろん、世界遺産をめぐる観光やグルメも楽しめた盛りだくさんのツアーだった。

 

FCバルサの哲学の真髄に触れ、改めて「育成の道筋」をどう与えていくのかという“指導の原点”を再認識できた。才能を発掘し、最適な条件、環境を用意し、適切なプログラムで才能を研磨する過程がここまで周到に整備され、クラブの哲学、育成の哲学をしっかり確立し、一貫して徹底することによってのみ、“本物のサッカー選手”が輩出されることを再確認させられた。

 

今や、日本ではJ1、J2で40クラブ。更にJ3がスタートするが、Jクラブのアカデミーに“哲学”と呼べる確固たる姿勢・信念・理想はあるのか?小6、中3のタレント層を優先的にセレクトしておきながら、クラブで育成することへの責任、自覚はあるのか?

 

「Jクラブのユースからだけでなく、高体連、大学からもプロや代表選手が育つのが日本の強みだ」と表現する言い方もできるが、J誕生から20年も経過し、本物の育成ヴィジョンを確立できていないJクラブの育成は大きな問題である。

 

教育機関との連携やサッカー以外の人格的、人間的成長をいかにして求めていくのかもごまかしのきかない課題であるはずだ。“ Player’s First! ” は、お題目だけなのか?

 

“本物”を育てるには、

“本物”の指導者であることが求められる。

 

ここ数年のJ新入団選手(約120名)の内訳は、大卒60名、Jユース出身40名、高卒10〜13名という現状である。“育成のプロ”と呼べる本物のコーチは、まだ少ない。

 

 

 

乾 眞寛